諦めてください。こればかりはどうにも手の施しようがありません。
こんばんは。
「なぜオジさんは威張るのか? 傲慢なオヤジを謙虚にさせる方法はないか?」
私はこの問いに対して自分の考えを明確に持っていませんでした。正確にいうと深く考えたことがない。
「威張るオヤジに不愉快な気分になる」という体験を何度もしているにもかかわらず、その原因や対処法については考えたこともなかったのです。
私自身も「オジさん」の範疇なので、周囲に嫌な思いをさせているかもしれません(笑)。
楠木建さんは、この質問に対しても痛快に、そして鮮やかにご自身のお考えを展開していきます。そして解決策を提示される。
その解決策、正確にいうと「ある原則」を提示されるまでの、楠木建さんの論の進め方が素晴らしい。そして、その語り口が面白すぎる。
そして、その原則も面白い。この章はお気に入りの章の一つです。
この質問に対して、楠木健さんはいきなり結論から入っています。
諦めてください。こればかりはどうにも手の施しようがありません。
楠木建さん自身の体験からもこうおっしゃっています。
半世紀ばかり、威張りに威張るオヤジ諸氏に何とも言えない生暖かい気持ちにさせられることばしばしばございました。
この「生暖かい気持ち」という表現は秀逸だな~。と思いました。私自身もこういう気持ちになる場面が幾度もありますが、「生暖かい気持ち」というのはしっくりきます。
ちなみに、この「どうしようもない」という回答は他の場面でもしばしば登場します。ただ「どうしようもない」けど「こう対処できるよ」というアドバイスはいただけますのでご安心ください。
そして、次の文章。
男の威張りは本能的宿痾。傲慢な男を謙虚にさせることはできない。
楠木建さんは「威張る」というのは男性の「本能的宿痾」と断言します。
「宿痾」という言葉は知っていましたが、「本能的宿痾」との表現が面白い。これだけでも勉強になりますね。
種の保存とか、序列をはっきりさせて集団生活の秩序を維持するといった目的で、男性に組み込まれている動物的な本能だそうです。
DNAに組み込まれているとなると、「どうしようもない」と納得せざるを得ませんね。残念ながら。
威張る人が嫌いな楠木さんは、そのような人への嫌悪感を示しながらも、威張りは男の本性にして本能なのでどうしようもないと考えている。
そして、ご自身にもこの「男の本性」を自覚して威張らないように心掛けている、と言います。あの物腰の柔らかさは、努めて出しているものなのですね。
さらには「威張りを表に出さない」というのが「真っ当な大人の条件」だとおっしゃっています。
「大人」については他の部分でも述べられており、その洞察に唸らされました。別途紹介したいと思います。
このあと少し話が逸れるのですが、これがまた面白い。
話の面白い人の脱線話が秀逸なのは世の常ですが、楠木建さんは群を抜いていると感じます。
明日に続けます。