68億円を失う そのことを良かったと思えるか
こんばんは。
本日はいかがお過ごしになりましたか?
梅雨空のこの季節で救われるのは、日がどんどん長くなっていくことですね。ですが、あと三日後には夏至を迎え、その後は日中時間が短くなってしまいます。
日中に生産的な時間を貪欲にとっていきたいと考えている今日この頃です。
さて、本題に入ります。
鍵山秀三郎さんのお話を続けていますが、ここ数日は「社員の幸福実現」を最大の目的としている鍵山さんの経営姿勢がにじみ出るエピソードをお伝えしました。
「人格者」という言葉で簡単に片づけられないような素晴らしさと凄さを感じずにはいられない逸話の数々です。
利己的なところが全く感じられません。
今日は、鍵山さんの誠実さ・思いやりにしびれてしまう逸話をもう一つお伝えしたいと思います。
ご自身の身一つで創業後、幾多の困難を乗り越えてきた鍵山さん。
イエローハットが株の店頭公開に踏み切ったのは、平成2年12月21日のことでした。
当初は同年9月17日の上場予定が、訳あって12月までにずれこみました。
昭和36年の創業から、30年近くが経過していた時期。当時の鍵山さんは57歳でした。
当時、株式市場ではイエローハット株が注目され、高値が噂されていたといいます。
特に最近は「会社を上場させて多額の資産を手に入れる」というのは一つのサクセスストーリーとして語られることが多いですよね。
「いかに高値をつけさせるか」に焦点を合わせ、できる限り多くの資産を手に入れようと躍起になる創業社長の話も数多聞きます。
ですが、鍵山さんは違います。まったく利己的なお考えをお持ちでないのです。
「実力不相応の高値を危惧した私は、株価が沈静化するのを待つため店頭公開日を三カ月ほど延期した。」
実力不相応だと、その後必ず株の値は下がる。そうすると、買った人に損をすることになる。それでは申し訳ない。自社の株を持っていただいた方には喜んでもらいたい。
そういう考えのもと下した決断でした。
信じられますか?
創業者は利益を得て当然です。それだけのリスクをとり、そして、苦労をしてきたのですから。その利益を得るために創業するという考え方もあります。
客観的に見ても、創業者利益を得ることは当然のことと考えられていると感じますが、あなたはどう思われますか?
当初上場予定の9月17日には1株12,200円の高値が付きそうだった同社の株は、12月21日に1株7,678円まで下がっていました。
この3か月間でなんと4,522円下落したのです。
その時のことを、鍵山さんはこう振り返っています。
「私は内心、この価格でもまだ高いと思っていました」
信じられますか?
ふつうのひとであれば、できる限り高値で売るでしょう。少なくとも私ならそうです(笑)。
「結果として約68億円の減額となった。創業者利益の恩恵は少なくなったが、その分、損をする株主も少なくなった。」
本当に利他的な方です。私は絶対に真似できません。