そもそも人の悩みというのは他人には分からない
こんばんは。
楠木建さんの『好きなようにしてください』からの学びをお伝えしています。
今日からは「大人」と「子ども」の違いについて、をテーマに、楠木建さんの鋭い洞察をお伝えしていきたいと思います。
何度も書いていますが、着眼点や論の組み立て方が際立っているだけでなく、語り口や脱線話が面白いのです。(脱線といっても、本論とは関係していて、最終的には結論と密接に絡み合っています。こんなに惹きつける文章を書かれる方は他にいないのではないか、と尊敬しています。)
大手メーカーに勤める課長の、部下への対処法についての相談です。
下記に要約しますね。
仕事ができるとは言えない部下が社会人大学院に通い始めて、残業をしなくなる。ちょっと仕事を頼むと「すみません、大学院があるんで」と断られてしまう。仕事ができるとは言えない部下がなぜマネジメントをわざわざ外に習いにいくのか?そのこと自体もややイラっとするうえに戦力にならない事実が追い打ちをかけます。私はどのように対処したらいいでしょうか?
もしあなたがこんな相談を受けたら、どのように答えますか?
肉親や親友からの相談であれば、真剣に考えるでしょう。相談者を擁護するかもしれませんし、もしくは相談者のことを思って厳しい助言をするかもしれません。
逆に相談者とあなたの関係が深くない場合や、それほどの利害関係がない場合であれば、ありきたりの、当たり障りのない回答をするのではないでしょうか。
まあ、この文章だけだと、細かい背景や事情も分かりませんので、
「職場の人間関係は難しいですよね。」
「最近の若い人は理解に苦しみますね。」
といった感じでしょうか。決して相談者を凹ませたり、悪い気分にさせたり、といったことはしないでしょう。
そもそも人の悩みというのは他人には分からないものです。それは相談者と被相談者の関係が深くても同じこと。違うのは感情が伴うかどうかだけ。
親子や親友の間柄であれば、相談者を助けてあげたいという心理が働く。相談者に苦労して欲しくないという情が働く。感情が主になるので論理的には少しおかしいアドバイスにもなる。客観的に考えれば、つまり赤の他人に対してであれば決してしない助言にもなる。そういう可能性を前提にしておかないといけませんね。
進路や就職、結婚といった、大きな岐路における相談の場合には、その傾向がより強いですね。親は子どもに苦労をかけたくないので、安全や安定を重視した選択を促してしまうものです。
この意味では、関係の深い人たちに相談をするのではなく、少し距離のある、人生経験が豊かな人に相談した方がいいかもしれません。あなたが、客観的な意見を求めるのであれば、ですが。
前置きが長くなってしまいました。明日に続けます。